奥穂高岳〜西穂高岳縦走

2015年8月、私は穂高岳〜西穂高岳への縦走に挑戦しました。
この場所は全国屈指の岩山で経験者だけが許される難関コースである。
そこで、これまでの登山では必要としなかったヘルメットを装備してアタックすることにしました。


今回の行程は2日間、チョツト強行ではあるが新穂高温泉から入山して下山にロープウェイを利用することにしました。
1日目(8/11)は新穂高温泉ー穂高平避難小屋ー白出沢出会ー白出沢ー穂高岳山荘(泊)
2日目(8/12)ー穂高岳山荘ー奥穂高岳ージャンダルムー西穂高岳ー西穂独標ー西穂山荘ー新穂高ロープウエイ
ここからの登山は2日間共に約10時間程かかることで体力的に一抹の不安を抱えながら地図を見ていました。
前日の8月10日19時に新穂高温泉の駐車場に到着しました。
駐車場は混雑はしていたが何とか車を止めることが出来ました。
夕食をとりながら気になる天気予報をチェック、明日は晴れるが明後日は曇り一時雨、なんとも嫌な感じの状態で眠りにつく。
車中では時々目が覚めたりで浅い眠りのまま4時30分に起床。
5時に駐車場を出発、今日のコースは2時間で槍岳方面と穂高岳方面の分岐点白出沢出会へ、ここまでは以前槍に登った時のコースで覚えいる。
途中、林道から朝日に照らされた笠ヶ岳と笠ヶ岳山荘を望むことができ、一気に気分が高揚してアルピニストになりきりました。
白出沢出会には予定通り7時に到着し朝食のお握りを食べました。
ここから、しばらくは樹林帯だが結構木の根っこが有り登りにくい、重太郎橋を通過したころから岩盤の急登が始まりました。ここから、万が一の落石から身を守るためにヘルメットを被ることにしました。(ガレ場での転倒からも頭を守れる。)
荷継小屋後に9時20分と予定より1時間早いペースで到着しました。
それにしても暑い!汗がしたたり落ちる。
只、背後に笠ヶ岳を望みながらの登りは気分を高揚させてくれました。

ここから一気に沢のガレ場を登るコースで左側は涸沢岳、右側が奥穂高岳からの岩壁で落石の危険もあり気が抜けない。
落石があると両岩壁に反響して凄い音がする。
現に下山者が落とした石の音が凄い轟音で思わず身をすくめました。
又、雪渓が落ちる音も凄い轟音で大変なところに入り込んだと思いました。
そんな不安の中、標高2.500mを越えたあたりから私の体に変化が起きてきました。
軽い頭痛がしてきたのだ。
えっ!高山病?そんな馬鹿な?しばらく休憩することにしました。
コーヒーでも沸かそうかと思いましたがそんな気分にもなれず上部に見える山荘の石垣をボーと眺めていました。
それでも「千里の道も一歩から」と言い聞かせながら穂高山荘を目指し重い足を引きずりながら予定より1時間早く登り切りました。
いつもなら直ぐにビールとなるが今日は体調のこともあり夕食時に飲むことにしました。
穂高山荘での受付を済ませて眼下に涸沢カールを望む場所でコーヒーを沸かし干し柿を食べながら2年振りのアルプスを眺めていました。

3時ごろになると雨が降りだし明日の天候が気になりだしました。
5時発表の予報では深夜まで雨が降り、明日は晴れの予報になりました。
只、雨で岩場が滑る危険もある。
その時は躊躇せず引き返そうと心に言い聞かせて床に入る。
ところが、ここで再び体調に異変が生じてきました。汗が吹き出し、軽いめまいと動悸がしてきました。
「おいおいこれって熱中症?」ヤバイ状態で横になっていると外から入ってきた隣の人が「この部屋の温度30℃近くになっているよ!」と言って窓を開けてくれました。
涼しい爽やかな空気が入ってきてみるみるうちに体が楽にっていくのがわかりました。
その後深い眠りに入り目が覚めたのは早朝の4時15分でした。
7時間グッスリと眠ることができました。
外を見ると満天の星空で早立ちの人や日の出を見る人達で賑わっていました。
体調は昨晩の事が嘘の様にスッキリとして爽快な朝を迎えていました。
はやる気持ちを抑えながら先ずは混雑している奥穂高岳へ登頂、途中日の出を見ながらジャンダルムへと気を引き締めてアタックを開始する。
岩場の登り下りは緊張とスリル感で麻薬的存在で私を招いてくれました。
定年後にのめり込んだ岩山へのチャレンジ、ここのコースを目標に定め訓練してきました。
いよいよ今からアタックするのかと思うと目頭が熱くなってくる。
私の前に若い青年が2人、ジャンダルムを往復するとの事でそこまで一緒に行く事にしました。

青年たちは老体の私を労わりゆっくりと誘導してくれました。
その人達とジャンダルム制覇の記念写真を撮り合いながら握手をして別れました。

いよいよ単独で西穂高岳に向けての岩登りを開始することになりました。
地図を広げてみるとここから岳沢への分岐点「天狗のコル」へは1時間の行程である。
岩は登りより下りの方が危険であり足場を確保しながら「天狗のコル」には予定どおり7時20分に到着しました。

ここから、天狗岩に向かっての登りにアタックする結構浮石があり慎重に足場を確保しながら天狗岩を越え「間天のコル」に7時45に到着。
ここで後方から来ていた若者2人が私を追い越して行きました。
ヘルメットは装着せず、なんとも非常識な無謀な連中、「お前ら見たいな人がいるから事故が起きるんだぞ〜」と叫びたくなりました。
ここで気を引き締め再び難関にアタック、間ノ岳、赤石岳と登ったり下りたりには、いつになったら尽きるのかと思えるほど長く感じました。
延々と続く岩山には緊張感からの疲労も増しこのコースの難路たる所以が理解できました。

時折、「千里の道も一歩から」と言い聞かせ、ようやく2時間経過後の9時55分に西穂高岳にたどり着きました。

ここまで来るとこれまでの緊張もほぐれ安堵感と喜びでしばらく山頂に立ち万感の思いにふけっていました。
ここからはピラミッドピーク、独標までは足も軽く11時15分に到着。
ここで昼食を食べようとしたが食欲もなく飲み物と桃缶で済ませました。
20分程休憩して立ち上がって歩こうとした矢先に両足の膝が痛みだし真っ直ぐ歩いて下りることが出来ない?。
えっ〜と思いながら過去にこんな事があったのか記憶を手繰ってみた。
そう言えば50代の頃、白山の加賀禅定道の下りで11時間程歩いた時に経験した事を思い出だした。
それをすっかり忘れて、ことも有ろうに今回は前日も10時間ちかく今日も既に7時間を経過している。
60歳を過ぎた時から動けるまで山に行きたければ体を労わり決して無理をしないと言い聞かせてきたはずなのに!(^^)!・・・
反省しながら両ストックで体を支えながらゆっくりと下山、途中大きな石段で滑り転倒、右大腿部と左肘を擦り剥き痛い思いをしながら西穂山荘に12時30に到着。
山荘でのソフトクリームの美味しさは膝の痛みも和らぎ至福のひと時でした。
ここからはロープウエイ駅までは1時間、倍かかっても3時にはたどり着けるだろう。13時に山荘を出発、直ぐに下りの階段、真っ直ぐ降りるのが辛いが両ストックで支えながら確実にゆっくりと降りると次第に両膝の痛みも和らぎ14時30分にはロープウエイ駅に到着することができました。
15時30分に駐車場に到着、露天風呂のある「ひがくの湯」に直行し、朝から何も食べていないお腹にカレーライスを流し込み温泉に浸った。
疲労困憊の体に染み渡る温泉、ビールを飲みたいが帰路の運転があり我慢をする。
ここでの湯上りはマッサージ器での体のケアと冷えた牛乳を飲むことである。
乳製品が苦手な私ですが、牛乳がこれ程美味いと感じるのはここで飲む時だけである。
今回の登山は66歳の節目と言うことで少し無理をした感は否めなく、体調を崩し体重も2日間で5kも落ちビックリでした。
今回の縦走は辛いことも有りましたがそれ以上に達成感があり忘れることの出来ない思い出になりました。
今度は体を労わりながら、ゆっくりと余裕持ってジャンダルム山頂でのコーヒータイムに出かけたいと思います。

反省すべき点
・自分の歳を考える。(気力、思考能力は有っても体力は下り坂)
・我慢せず多めの休憩を取る。(コーヒーを沸かす余裕を持つ)
・慌てなくても山はそこにある。(忙しく事前準備がおろそかになった)
・前泊には車中泊をしない。(若い時と違って熟睡できず寝不足になる)

良かった点
・両ストックを持って行った事(岩場で不要と思ったが今回は膝痛の支えになった)
・ヘルメットを被った事(身が引き締まるし落石から自分の身を守る最低限の常識)
・若者と張り合わなかった事。(ピークを過ぎた体力を自覚)